Sake 101
Ep.3「SAKEの保存のしかたを教えて!」

SAKEビギナーのAyaとTomokoがSAKEを楽しむためのノウハウを、利酒師Sakiから伝授してもらう『SAKE 101』第3回。


好みのSAKEを購入して、家飲みを楽しむようになったAya。
飲みきれなかったSAKEでSAKE女子会を始めたら、以前飲んだときと味わいが変わっていて……。

Edited by TOMOKO


今日はSakiさん、TomokoさんとSAKE女子会♡ 先週飲んだ「風の森」が少し余ってたな~。「風の森」は好きなSAKEだし、二人にも飲んでもらおうっと!
……あれ? なんかおいしくなくなってる……?? せっかく好みのSAKEを見つけたと思ったのになんで~~~???


SAKE女子会にかんぱーーーい!!
あれ?? Ayaさん、どうしたの? 浮かない顔だけど…。


わたしのお気に入りの「風の森」を二人に飲んでもらいたかったのに、今飲んだらおいしくないんです……。
先週一人で飲んだときは、わたし好みで、「これだ!!」って思ったのに~~ガックシ。



え? 先週と今と味が変わってるの?



そういうことか~(笑)。それはね、微生物の仕業だよ。



微生物??


そう。油長酒造の「風の森」は、「生酒」といって、SAKEの中で生きている微生物(お酒造りのために活躍してくれていた酵母など)の活動を止める「火入れ」という工程を経ていないSAKE。だから、開栓後に空気に触れたり、温度が上がったりして微生物のはたらきが活発になった結果、お酒の味が変わってしまったんだと思うな。


微生物の力で味わいが変化するんですね。
「生酒」じゃない別のSAKEなら、こんな変化は起きないんですか?


ううん。まず、SAKEは①時間が経ったり、②酸素に触れたりすると、味わいが変化していく飲み物なの。
だから、「火入れ」してあるSAKEも味わいは変化していくんだけど、特に微生物の活動を止めてない「生酒」はその変化の速度がはやいんだ。


なるほど~。だから、先週と今日で味わいが変化しちゃったんですね。
一週間でおいしく飲めなくなっちゃうなんてハードルが高いなぁ。


すべてのSAKEがおいしくなくなるわけじゃないよ。
「開栓してから日数が経って味わいに変化がある」=「熟成する」っていうことなんだけど、覚えておいてほしいのは、「いい熟成」と「悪い熟成」があるということ。



「いい熟成」と「悪い熟成」??


たとえば開栓後すぐに飲んでみて「あまりおいしくないな」と思ったSAKEが、熟成させることでおいしくなるパターンがあるんだ。これが「いい熟成」だね。
一方で、Ayaさんが飲んだ「風の森」のように、開けたばかりのタイミングがおいしさのピークで、だんだんおいしく感じられなくなってしまうものもあるよ。



「生酒」のように、味わいの変化が早いSAKEは開栓してからなるべく早いうちに飲みきったほうがいいんですね!


そうだね。開栓してしばらくおくと、フレッシュさが失われたり、熟成が進んで甘くなりすぎてしまったりすることがあるから、Ayaさんみたいにスッキリした味わいのお酒が好みだと、おいしく感じられないかもしれないね。
ただ、好みだから、「こっちのほうが好き」という人もいると思うよ。



同じSAKEなのに不思議~。


たとえば青果市場では、お客さんの手元に届くタイミングでちょうど完熟するように、まだ青い未熟なフルーツを出荷したりするんだ。それと同じように、お店に並び、お客さんに飲まれるタイミングでベストな味になるように、ちょっと未熟な状態で出荷されているSAKEもあるんだよ。



へ~、出荷してからお客さんの手元に届くまでのあいだも、どんどん味わいが変化しているんですね。


たとえば開栓してみて、「ちょっと味が硬いな、粗いな」と思ったら、一日、数日、一週間……と、時間を置いてから飲んでみて。きっと味わいに変化があるはずだよ。



自分でSAKEを熟成させるんですね。プロみたいでかっこいい!


そうそう! パッと飲んで「おいしくない」と思ったり、「このSAKEはどんな風に変化するんだろう」と探ってみたくなったりしたら、ぜひ開栓後の変化を実験してほしいな。


日毎に味が変わるなんて、SAKEって生き物なんですね。
ところで、「風の森」は冷蔵庫で保存してたんですけど、酒屋さんでは常温で売っているSAKEもありますよね。常温と冷蔵の保存の違いって何なんですか?


保存温度もSAKEの種類によって異なるんだよ。
常温で置いておくと味が変化してしまいやすい生酒や吟醸酒は冷蔵保存で販売されていることが多いね。「生」や「吟醸」がつかない純米酒や本醸造酒といったSAKEは、比較的頑丈だから、常温保存で販売してもOKと言われることが多いかな~。ただし、紫外線は味の劣化の原因になるから、日光が当たらないように気をつける必要はあるんだけど。



「販売」ってことは、もしかして、家での保管方法は違うんですか?


よく気がつきました! 家での保存方法にはポイントがふたつ。
一つ目は、開栓後の保存について。開栓後は開栓前よりも、SAKEが空気に触れる面積が増えるから、味の変化が早くなるんだ。お店で常温販売されていたSAKEでも、開栓後は冷蔵庫で保存したほうが品質の変化がゆるやかになるから、ビギナーの二人にはオススメだよ。



あ、だからSAKEって焼酎やウイスキーみたいにキープボトルってないんだ!


そうだね、焼酎やウイスキーはSAKEとは造り方が違う「蒸留酒」というお酒で、SAKEよりも頑丈で保存がしやすいから、キープボトルにするお店が多いね。
SAKEのキープボトルをしているお店もないわけではないけど、焼酎やウイスキーに比べたら品質の変化が早く、管理が大変! それがSAKEのキープボトルをするお店が少ない理由かな。



お店でも管理が難しいなら、素人のわたしは早めに飲み切るしかないな~。



でも、わたしの知り合いのSAKEマニアには、開栓後のSAKEを常温で熟成させて味の変化を楽しむ実験をするような猛者もいるよ(笑)。



も、猛者!! わたしたちも早くその域に達したいです!!


がんばれ~!
次に二つ目のポイントだけど、「保存に最適な温度」と「飲用に最適な温度」は違うの。たとえば冷蔵販売されているSAKEをお燗にして飲んでもおいしいし、常温保存していたSAKEをキンキンに冷やしたほうがおいしく飲める、ということは多々あるんだよ。



え~、そうなんですか? 冷蔵販売しているSAKEをお燗にする発想はなかった!


「保存温度」はあくまでもSAKEの「品質」をキープするためのもの。飲むときの温度は、それとは別にいろいろなチャレンジができるということを覚えておくと、また一歩猛者に近づけるよ~!(笑)

●○まとめ○●

・SAKEは温度を上げたり、酸素に触れたり、時間が経過したりすることで味が変化(=熟成)する。
・開栓後は味の変化が早くなるので、冷蔵保存がベター。
・自分で熟成にチャレンジ! 味の変化を楽しもう。