Drinker’s Note
飲むたびに表情を変える、生きている酒 – 油長酒造「風の森 秋津穂 純米しぼり 華」

Written by Aya

SAKEビギナーのAyaです。今回は油長酒造「風の森 秋津穂 純米しぼり 華」についてお伝えします。

「酒をグラスに注ぐ。透明感のあるレモンイエロー。わずかに残る発酵時の炭酸ガスが泡粒をつくる。顔に近づけるとほのかな果実の香り。口に含むと鼻に抜けるさわやかな香りと共にボリューム感のある味わいが押し寄せる。のど元を過ぎた後は口中をクリアにまとめていく余韻ある酸味。お酒を飲むという一連の動きの中で人間の五感をくすぐる酒。 それが風の森です」

これは油長酒造のホームページ に掲載されている「風の森」の説明です。
SAKEといえば「あまりおいしくないもの」と思い込み、今まで興味を持たなかった私にとっては気になる説明です。
SAKEなのに果実の香り? 炭酸ガス? 炭酸水のようにしゅわしゅわしているのかな? 想像がつくようなつかないような…。
サワーや果実酒が好きな人におすすめのお酒ということで、チャレンジしてみることにしました

「あーおいしいー!」

「風の森」は、私の記憶にあるSAKEとは全く別の飲み物でした。
すっきりとした味わいで、炭酸がきいています。喉ごしがなめらかなので、ジュースのようにどんどん飲んでしまいそう。

油長酒造は「風の森」の紹介ページに、酒の価値をこのように書いています。

「人が食事をして、酒を飲む。数千年もの間営まれてきた日々の日常。これをより豊かにそして愉しいひとときに変える。それが日本酒の価値だと風の森は考えます」

飲みながらこの言葉を実感します。食事を邪魔しない。それなのにきちんと存在感がある。
私も、おいしいお酒とともにおいしいごはんを友人と楽しみ、幸せな時間を過ごしました。

ところが、飲み始めはきんきんに冷えていた「風の森」も、室温に戻ってくると甘さが際立ち始めました。
SAKEは温度で味が変わると聞いていましたが、こんなにも違うものなんですね! 何度も違う味わいを楽しめるのはSAKEのおもしろさの一つです。
ちなみに、私はすっきりとした味わいが好みなので、飲み始めの冷えているときの味の方が好きです。

また、ホームページには「『風の森』の楽しみ方」も書いてありました。「風の森は1瓶で2通りの味わいをお楽しみいただけます」。炭酸ガスがある状態と、数日経って炭酸ガスがなくなった状態では、味が変わるのだそうです。

この通りに開栓から数日後に飲んでみました。
なるほどね! 全然味が違います。甘みが増していました。
といっても、当日の室温に戻ったときの味とは異なり、もっとすっきりとした味わいでした。その中にはっきりと感じる甘み。お酒の温度、開栓からの時間によって、1瓶で2通り以上の味わいを楽しむことができました。

SAKE発祥の地、奈良で来年創業300周年を迎える油長酒造。先人の築いた技術や伝統を守りながら醸造を続ける一方で、後世へ技術を伝えるため新しい醸造方法にも挑戦しています。
それが「風の森 ALPHA」シリーズ。私は海外の輸出にも適応できるように開発されたTYPE3が気になります。

「風の森」は加熱処理(火入れ)をしていない「生酒」です。生酒は温度の影響を受けやすいので、加熱処理されたお酒に比べ、温度管理に気をつかう必要があり、冷蔵庫での保管が必須です。このため本来の味をそのまま保ちつつ、海外へ輸送するのは簡単ではありません。

そこで開発されたのが「風の森 ALPHA TYPE 3」です。火入れをしながらも、生酒の味を再現することに挑戦しています。

SakeTips!の目的の一つは、SAKAEの魅力を海外の人に広めることです。
「風の森 ALPHA TYPE 3」は、この目的を体現したお酒だと、油長酒造の想いに深く共感しました。

今回飲んだ「風の森 秋津穂 純米しぼり 華精米歩合 65%」と「風の森 ALPHA TYPE 3」がどれほど似た味になっているのか、飲み比べてみたいです。

おいしい食事とともにおいしいお酒を飲む。これを楽しい一時に変えることを価値として掲げ、伝統を守りながらも、新しい挑戦を続ける油長酒造の「風の森」。
1瓶でたくさんの異なった味わいを楽しむことができます。自分の好みの味わいを探すために、ぜひ試してみてください。