Book Review:

読んだあなたも、きっとSAKEに恋する

『日本酒に恋して』

Written by Yoko

【この本との出会い】

私はカリフォルニアのベイエリアに暮らすSAKE初心者です。SAKEにゆる〜くアンテナを張りながら、日々を過ごしていたところ、ある日Twitterでこの本のことを知りました。タイトルにある「恋して」という言葉と、何よりマンガという点に惹かれて購入しました。結果、SAKEにもっと詳しくなりたいけど、小難しい本は苦手だと思っていた私にピッタリの一冊でした。

【主人公「千葉麻里絵」さんと本書の魅力】

日本酒業界の方や、SAKEに詳しい方なら皆さんご存知なのかもしれませんが、私は本書を読んで初めて麻里絵さんのことを知りました。本書は麻里絵さんがどんな方で、どういうきっかけでSAKEに出会い、SAKEにどう向き合い、そしてSAKEで何をしたいのかについて描いているマンガです。

最も印象に残っているエピソードの一つは、とある酒造の社長と酒談義をしていて、◯◯は「オレンジ色に輝いているイメージ」、◯◯は「エメラルドグリーン」と麻里絵さんがそれぞのSAKEに対するイメージを色で表現している中で、「じゃあ、うちのSAKEは?」と聞かれ、正直に「グレーです」と答える場面。グレー=輝いていないということで、当然その社長を怒らせてしまった訳ですが、うそのつけない正直な人だなと感じると同時に、酒に対して真っ直ぐで正直でいたいという誠実さを感じました。

詳細については本書を読んで頂きたいのですが、この本の最大の魅力は麻里絵さんを通して見る「SAKEの世界」がとてもカッコ良く、奥深く、そして何より面白いという点です。私のような初心者はもちろんのこと、SAKEに詳しい人にも新しい発見をもたらす一冊だと感じました。例えば「オフフレーバー」という言葉は、私のような初心者には初めて知る言葉として勉強になる一方で、オフフレーバーに関する議論や試みは、SAKEに詳しい人にも興味深い内容ではないかと想像するからです。

SAKEを愛するのを同じくらいに、作り手である酒造や酒販店、他の飲食店など周りの人々を尊敬し、その関係を大切にしている麻里絵さんは、周囲の人々からも同じくらいに愛され、とても良い関係を築いています。麻里絵さんの周りにいる魅力的な人々や、彼らとのコミュニケーションも本書の魅力の一つです。

読了後の感想は「麻里絵さんのお店に行きたい! 麻里絵さんにお会いしたい! 私の知らないSAKEの世界をもっと知りたい!」でした。麻里絵さんを通して見るSAKEの世界はそれくらいキラキラと輝いていて面白いのです。

お客さんのリクエストにより的確に応じられるよう、清酒官能評価セミナーで勉強し、SAKEの成分を知ること、つまり化学の力で味を分析し、一人ひとりのお客さんに最適の酒を提供することを、麻里絵さんは「私は酒の名医になればいい」と表現しています。

私は麻里絵さんは酒や酒造と飲み手の間を繋ぐ架け橋であると同時に、ナビゲーターであり最高のエンターテイナーでもあると思います。SAKEに関する確かな知識とSAKEへの愛情、作り手や歴史に対し尊敬の念を抱きながらも、自由な発想と取り組みで飲み手に新しさや驚きを提案する。SAKEに山椒やペッパーを加えるという飲み方は今回初めて知って、とても驚いたと同時に、強烈に興味をそそられました。SAKEは歴史のある飲み物ですが、SAKEそのものも変化や進化を遂げていて、我々飲み手ももっともっといろいろな楽しみ方をしてよいのだと気づかせてもらいました。

本になるような方は、一般的に気軽に会いに行けるような存在ではありませんが、麻里絵さんにはお店に行けば会うことができます。日本に本帰国したら、絶対に会いに行く! と心に決めています。

【カリフォルニアのベイエリアでSAKEを勉強する難しさと麻里絵さんのお店「GEM by motoの魅力」】

私はまだまだSAKE初心者です。SakeTips!に参加してから、銘柄や「大吟醸」と言った言葉だけでSAKEを選んでいたころよりは少しは成長し、今まで知らなかった自分の好みや常温のおいしさもわかるようになってきましたが、熱燗の美味しさはまだわからないし、飲んだことのある銘柄もほんの少しだけです。だから、いろいろ試してみたいと思っているのですが……。

私の暮らすカリフォルニアのベイエリアは、物価が非常に高いのです! 外食は日本の2、3倍するのは当たり前で、コストパフォーマンスは非常に悪いため、基本的には家で自炊。外食することはあまりありません。

そんな物価の高いベイエリアではありますが、外食する際(特に和食店)は、必ずドリンクメニューでSAKEをチェックするようにしています。和食店ではSAKEを取り扱っているお店は比較的多いものの、あまり需要がないからなのか、ボトルでオーダーしなければならない場合が多く、グラスで気軽に楽しめるお店が少ないのです。私はSAKE初心者なので、料理との組み合わせを含め、いろいろなSAKEを気軽に試してみたいのに、そういうお店は少ないのが現状です。

そういう状況で生活しているので、SAKEのために開発された料理とその料理にぴったりのSAKE、さらにはSAKEをちょうどいい状態で熟成できるマイナス5℃の氷温庫まであり、「料理とSAKEのペアリングで第三の味を感じてほしい」という麻里絵さんが、カウンターで客の一人一人とコミュニケーションを取りながら、一人一人の好みに合わせて「おいしい」や「楽しい」という「体験」を提供している「GEM by moto」は天国のような場所だと感じました。

私も本の中に登場する人たちのように、麻里絵さんにSAKEのことをいろいろ教えてもらいたい、麻里絵さんオススメのSAKEを飲んでみたい、こんなSAKEもあるんだ! このSAKEとこの肴の組み合わせ最高!といった経験をしてみたいと妄想は広がるばかりです。

カリフォルニアには本場のディズニーランドがありますが、私にとっては「GEM by moto」の方が、よりエンターテイメントな場所です!

【本書の教えてくれたSAKEの素晴らしさとSAKEへの思い】

「日本酒の可能性は無限大」と語る麻里絵さん。私にとっての「おいしい」や「楽しい」SAKEもきっと無限大のはず。季節、温度、コンディション(体も心も)、一緒に飲む人、場所、酒器、肴との組み合わせによって、SAKEの味は変化し、全く同じ味わいの瞬間は存在せず、その時々、その瞬間で違う表情を見せてくれる。本書を読んでいて、これこそが SAKEの最大の魅力かもしれないと感じました。

また、麻里絵さんは「日本酒は宝物」とも言っています。上述したように、麻里絵さんや麻里絵さんがSAKEを通じて出会った人々は、みなさん本当に真剣にSAKEに向き合い、SAKEに対してとても熱い思いをもっています。そうやって愛されているSAKEは日本の宝であり、日本人として誇るべき文化だと感じさせられる作品でした。

ちなみに店名にあるGEM(ジェム)には、宝石や宝石のように美しいもの、磨けば光るという意味があり、宝物のような日本酒を楽しんでいただくという意味を込めてつけられています。

日本国内外でもっともっとSAKEの素晴らしさが認知され、ファンが増えて行き、行く行くは世界の「GEM(宝物)」になる、そんな日がきたら、とてもうれしいですよね。