SAKE日記をつけよう
~SAKEと健康を考える~

Written by Hanako

新型コロナウイルスの影響で、まだまだ先が見えない状況が続いています。
私が住む福岡県も緊急事態宣言の対象県であり、2020年4月8日以降あらゆる商業施設が閉館。私自身も、完全に在宅での仕事となりました。

おおよそ1か月、ほぼ自宅に引きこもる生活をしていると、どんどん増える飲酒量……。
私は、医療関係者ではありませんが、管理栄養士として身体の健康サポートする仕事をしているので、今回は「SAKEと健康」について少しお話したいと思います。

「見せるため」ではなく、「自分のため」に記録を残す

私はここ何年か、食事と健康の記録をつけています。
といっても難しいものではなく、毎日食べたものと、腹痛、腰痛などの痛み、眠気や、感情の起伏、排便、生理などについて、日誌のように書き留めているだけです。

世の中にはさまざまな健康法がありますが、全部が全部、自分にとってよいものとは限りません。
ものによっては、反対に健康状態を悪化させてしまうこともあります。
食べたものがすぐに身体に影響する場合ももちろんありますが、たいていは翌日以降のコンディションに反映されていきます。
そんなとき、昨日食べたものも覚えておらず、「今日の夕食はどうしよう?」と先に食べるもののことばかりに目を向けてしまうと、なぜ今体調がすぐれないのかを考える間もなく日々は過ぎていき、同じことを繰り返してしまうことになります。

そうした事態を防ぐために、日々の食事と健康状態を書き記してみるのです。
簡単なメモでも、何か月、何年も続けていけば、不調が起きた時の対処法や、自分の身体に合った健康法が見つけやすくなります。
私はお酒は強いほうですが、比較的虚弱体質なので、それを改善すべく、記録を付けながら日々自分の身体で研究しているという面もあります。

例えば、以前、たんぱく質の補給を目的として、1か月近く、毎朝ヨーグルトを食べていました。しかし、その次の生理で、今まで感じたことのない生理痛を体験。記録を読み返すと、変えたことといえば毎朝のヨーグルトだけ。これをやめてみたところ、生理痛がなくなったのです。
毎朝冷たいものを食べていたのがよくなかったのか、原因と結果をはっきりと断定できるほどの根拠はありませんが、毎日の食事に自分の不調が潜んでいるのだと気づかされました。

ヨーグルトは代表的な発酵食品。私自身、発酵食品について発信していますし、あちこちで「発酵食品は健康によい」と言われていますよね。しかしながら、その中でも合わないものがある。自家製ヨーグルトであればまた違ってくるのかもしれませんが、それは今後の検討課題です。
「健康によい」と言われているものは数えきれないほどあります。しかし、すべてを摂取したからといって、必ずしも健康になれるわけではないのです。

SAKEは身体によいのか、悪いのか

さて、この話とSAKEに何の関係が……と思われてしまうかもしれません。
今も昔もアルコールが身体にもたらすデメリットは挙げてもきりがなく、いわゆる「健康的な生活」にアルコールは必要ないという考えも少なくはありません。
加えて最近ではアルコールを飲まない人も増えており、ノンアルコール飲料がどんどん生産されているといった話も聞きます。

コロナ禍が経済にもたらす影響により、多くの方々の収入が減っていく中で、嗜好品であるSAKEは多くの人にとって「生活必需品」にはならないかもしれません。
(私を含め、SakeTips!の読者にとっては生活必需品でしょうが)
飲食店も営業停止に追い込まれ、酒造会社が苦しんでいる中で、自分ができることは飲んで少しでも消費量に貢献することだと思っていました。
しかし、この引きこもり生活の中で、多くの人が「長くSAKEを楽しめる方法」を提案することも自分にできることのひとつなのではないかと思うようになりました。

アルコールの飲みすぎで身体を悪くし、禁酒を余儀なくされた方、病気を抱えているにもかかわらず、飲めれば何でもいいと多量飲酒する方……。私はこれまで、いわゆるアルコールが与えるデメリットの部分をたくさん見てきました。
「SAKEは健康を損なう」と言われているのは事実です。一方で、SAKEが与える健康効果にまつわる書籍や論文が出ているという側面もあります。

SAKEを健康によいものにするか、悪いものにするかは自分次第。
そのために大切なのは、自分をきちんと観察し、自分の身体の状態を知ること。
「なんとなく飲酒量が増えてきている」と感じている人は多いことでしょう。では、「なんとなく」って具体的にどのくらいなのでしょうか? 人によって「多い、少ない」の感じ方は違いますから、実際に数字として事実を把握することも大切です。
そこで役立つのが、「SAKE日記」です。

SAKE日記をつけてみよう

用意するもの
・お好きな手帳、ノート、メモ帳など
・ペン

書き方(例)
・お酒の銘柄
・飲んだ量
・可能であれば時間
・その日の状態。できれば肉体面(二日酔い、腰痛、頭痛など)、精神面(イライラする、幸せな気持ちなど)どちらも。

私はバーチカルの手帳に、その日飲んだお酒を食事記録とともに書いています。1週間が俯瞰で見ることができるのでおすすめです。あくまで「自分のため」ですし、人に見せるためのものではないので、どんな書き方でも構いません。
重要なのは、とにかく続けること。小さなメモ帳や付箋に書き込んだり、パソコンやSNSを活用したりと、自分にとってやりやすい方法を見つけてみましょう。
そして、不調を感じたら、その前日までに書いた内容を振り返り、何が原因なのかを考えてみましょう。

ずっと家にいて、何も変わらない毎日を過ごしていると思うかもしれませんが、細胞レベルで見ると私たちは毎日変化しています。決して「いつもと変わらない」ということはないのです。
変わり映えしない毎日を嘆くのではなく、その中で自分がどう変化しているのか、じっくり目を向けてあげてください。


私は、SAKEが多くの方の健康を支えるものであってほしいと思っています。以前、SAKE DAY2019のレポートにも書きましたが、SAKEは暮らしを豊かにするものであって、健康を害するためのものではあってはいけません。
できることなら、健やかな身体でおいしいSAKEを飲み続けたい。私は一生SAKEと付き合って行きたいからこそ、一時の心地よさに身をまかせてしまうことなく、自分の健康を自分で守りたいと思います。

外出自粛により制限のある生活の中で、健康に気を付けていくことが難しいと感じる人もいるかもしれません。
しかし、SAKE日記ならいつでも始められます。食べ物や飲んだお酒の記録をつけて、自分の身体の小さな変化に気づいてゆく、まずはそこから始めてみませんか。

たとえ、今回新型コロナウイルスのワクチンができ、現在のコロナ禍が終息したとしても、また将来新たなウイルスが登場する可能性はゼロではありません。あらゆる異常事態が起きたときに多くの人が自分自身の身体の小さな変化に気づけること。そのうえで、SAKEという文化が長く続くことを願ってやみません。