SAKE Meets RAMEN!
Ep.3「SAKEの多様性と『十四代』」

Written by Ryuji Otaki

私は学生の頃からSAKEが好きで、SAKEばかり飲んでいました。
中でも圧倒的に好きだったのが、「十四代」(高木酒造@山形)という銘柄。

当時の日本は、送料の値下げにより、冷蔵の宅配便が一般的になってきたころ。
それまで出回っていたのはほとんどが火入れのSAKEで、生酒は地元のみ、それも冬にしか出回っていませんでした。

冷蔵宅配便の普及により、生酒の流通を一般化したのは「十四代」を造る高木酒造だと言われています。
日本人のSAKE好きであれば、知らない人はいないであろう蔵元。高木酒造の15代目・高木顕統氏は、東京農業大学を卒業後、酒販店で働きはじめました。SAKE販売の現場を実際に体感したかったからだと聞きます。

そして出た答えが、「末端まで冷蔵化が進まなければ、生酒は卸せない」というものでした。つまり、蔵で寒造りされたお酒を、冷蔵便で出荷して、冷蔵設備のある酒屋に卸し、それがお茶の間に届く、そんなイメージ。
特約店を結ぶ際も、実際にお店を見に行き、その設備を確認してからでないと特約店契約を結ばなかったといいます。これは、今のように有名になる以前からのこと。その後、一気に大ブレークを果たし、他の蔵もそのやり方に追随していくことで、生酒は一般的になっていきました。

生酒の登場で、SAKEの味の表現の幅は一気に広がりました。
米や麹の違い、わずかな造りの違いが、味わいを大きく左右します。

今では「十四代」はプレミアがついてしまい、高値で売買されています。蔵元で2500円で販売されたお酒が、転売され、3万円で売られているんです。
これは悲しいことです。それなら、いっそ蔵元が3万で売れば良いと思います(笑)。

SAKEは嗜好品なので、好きなものを個人の好きなように感じて飲むのがいちばんです。ワインのように、「これはこういう味」といった理論を共有して料理に合わせるのではなく、あくまでも個人的な嗜好に合わせて自由に変えられるものだと思います。
私が、お店で「おすすめのSAKEは?」と尋ねられてもすぐにお答えできないことがあるのはこのためです。そのSAKEへの私の感じ方が、他の方にとっては違うかもしれないからです。

どうぞ人の意見を気にせず、自分の好きなSAKEを探していってください。

「十四代」はもともと私の大好きなお酒です。高いお金を払ってまで飲んでみたいという気持ちはわかるのですが、きっとプレミアがついていなくても自分に合うお酒はあるはずです。
その発見こそが、SAKEを楽しむ本当の醍醐味かもしれませんよ?