SAKE Meets RAMEN!!
Ep. 1「とんこつラーメンとSAKEを合わせるには?」

Interviewed by Keita Okubo

ラーメン店でSAKE。海外では一般的に認知されているSAKEの楽しみ方ですが、本国・日本ではそれほど一般的ではありません。

ではラーメンとSAKEは合わないのか……というとそんなことはなく、可能性に満ちた、日本人も知らない新しい楽しみ方があります。
本シリーズでは、多くのSAKEを提供するラーメン店「拉麺5510」の店主・大滝さんが、ラーメンとSAKEの関係性について考察します。

とんこつラーメンの「地域性」

とんこつラーメンと、SAKEですか。いきなり、なかなか難しいですね。
海外では一般的な組み合わせと聞きましたが、日本ではあまり見ませんよね。まずはその理由を探っていきましょう。
ひとくちに「とんこつラーメン」といっても、地域によってさまざまなタイプに分かれます。

たとえば、福岡の博多ラーメン。ややあっさりした味わいが特徴です。しかしこれは福岡の北側に言えることであって、南の久留米ラーメンなどは濃厚です。
同じ県内でも違うのに、九州には熊本や大分、宮崎、鹿児島にもとんこつラーメンがあり、それぞれ個性があります。さらに広島や和歌山あたりは「とんこつ醤油ラーメン」があるし、関東でとんこつといえば横浜の「家系ラーメン」があります。

ではなぜ、ここでは特に福岡のとんこつラーメンとしますが、SAKEと飲まれないのか。
それは、福岡のSAKEが比較的甘く、濃いものが多かったからだと思います。
福岡の「とんこつラーメン」はややあっさりしており、しっかり甘いタイプと相性はよくない。
もしこれが東北のほう「淡麗辛口」のような日本酒だったらまだあったかと思いますが…東北地方には「とんこつ」の文化がなく、この組み合わせは長い間試されることがなかったのです。

しかしそれと「合わない」は別の問題です。
さきほど話したSAKEの特徴は、数十年前、冷蔵設備が十分ではなかったときのもので、最近は食事との相性を考えたらSAKEが多く生まれていますし、品質管理のレベルも格段に進化しています。
なによりも、食が豊かになったことで、自分の個人の味覚を探究し、組み合わせを試す人が増えてきていますから。

とんこつラーメンに合うSAKEのタイプは2種

では、とんこつラーメンとSAKEという新しい飲み方を考えましょう。
今回、ラーメンはオーソドックスな「福岡」(一蘭、一風堂など)で、ややあっさりしたものとします。

【合わせ方①】山廃の酸で、ラーメンの個性を引き立てる
山廃仕込みのお酒がいいですね。酸があって、しっかり太い味わいのもの。
とんこつラーメンの旨みをSAKEの酸でぐーーっと締め、そのあとまたラーメンをすすると、とんこつの甘みがぐっと出てくるでしょうね。
例:花巴、舞美人

ちなみにこの方向だと、うちのお酒でもできそうです。

【合わせ方②】旨口の酒濃厚な味を切る
2つめは正反対のアプローチ。香り控えめで、火入れしている旨口の酒です。とんこつに負けないので、スープの後に飲むと口をリセットしてくれる。
例:大治郎、菊姫、常きげん

【合わせない方がいいもの】
海外で人気のSAKEというと華やかな香りの純米大吟醸があると思います。私ももちろん好きなSAKEですが、「とんこつラーメン」の独特の香りとバッティングしてしまう恐れがあります。
そもそも、吟醸香は食事と楽しむには不要だと思っています。ただし、この吟醸香が「食事の邪魔をしない」と思える人であれば合わせてもよいでしょうね。

その辺の好みがわかれたり、逆に言うと楽しみ方がいろいろあって、その個人的な楽しみを見つけるっていうのも面白いですよね。
とんこつはとんこつでも、醤油とんこつならどうなるか、温度はどうするか……など、考えるほどおもしろいですね。

日本酒とラーメンは、邪道なのか?

いいえ、まったく。SAKEでこれまでなかったというだけで、決まりなんてありません。
そもそも、日本人だって蕎麦でSAKEを呑んでいたわけじゃないですか。
日本でその楽しみが見られないのは、ただ麺は〆というイメージがあるだけ。

しかしそれは固定観念。
僕は、SAKE=ごはんだと思っていますので、それに合う味付け、つまりスープとの相性がよければ合わないはずはないと思っています。
最近「カレーでお酒を飲む」というように、「汁物」でお酒を飲む人も増えていますしね。それとラーメンも、かなり近いんじゃないですかね。

実験こそ、SAKEの楽しみ

今回は想像で話していることもかなりありますが、こんなことを考えながらいろいろと実験するのもいいものですよ。
最近はインスタントでもおいしいとんこつラーメンってたくさんでていますので、そのスープといろいろやってみて、自分の好きな方向性を知るというのもいいでしょう。
私は、ちょっと熱燗の温度帯を実験してみようと思います。


おっと、そろそろ、夜の仕込みの時間ですので、このへんで。
またいらっしゃってください。


※この記事の日本向けに再編集した記事をこちらに公開しています。