SAKEはアメリカの食文化を蛇行する
Sake Goes Mainstream In The US

Written by Eduardo A Dingler
Translated by Saki Kimura

SAKEに恋に落ちたのは約15年前。それまでは友人と“ホット・サケ”を楽しむ程度だった私が、地元の寿司店をよく訪れるようになったころのことです。このユニークな飲み物についてもっと知りたい──そこでのワクワクする体験をきっかけに、自分が暮らしているナパの地で手に入るさまざまな商品を飲み比べながら、その歴史や醸造方法について少しずつ学ぶようになりました。

2010年、私は「料理の鉄人」として知られる森本正治氏の西海岸初のレストランである「モリモト・ナパ」のドリンク部門を任され、その一年後、モリモト・レストラン・グループのコーポレート・ビバレッジ・ディレクターを務めるようになります。これによって私のSAKEの知識はさらに広がり、資格を取ったり、日本の酒造を訪れたり、それらを取り巻く文化を含めて体感したりと、その世界にどっぷりとハマってゆくことになりました。

私の知識と好奇心は、International Sake, Wine and Spirits Competitionsの審査員を務めるようになってからさらに深まってゆきました。SAKEに携わる人々との幸福な出会いの数々が、私のSAKEへの愛をさらに深いものにしていったのです。

私が自分の人生における大きな使命として感じているのは、SAKEを日本食ではないジャンルの食事と合わせるというアイデアを広めてゆくことです。ここ数年のあいだに、タコスやピザ、イタリアン、フレンチとSAKEの組み合わせを提唱するイベントを行いましたが、いずれも大盛況となりました。

日本で生まれたSAKEという飲み物は、アメリカ中の国際色豊かな食事シーンの中でどのような成功を収めているのでしょうか。以下に、私が知っていることをお話したいと思います。

 

この国において、SAKEが劇的なスピードで人気を集め、多くのファンを獲得していることは疑いようもありません。生産者、輸入業者、教育者やソムリエの努力の積み重ねが、アメリカ中にビッグウェーブを引き起こしています。

その事例は、長きにわたりワインに独占されてきた飲料ジャンルにおけるさまざまな領域をカバーしています。

SAKEの評価は、かつては想像できなかったラインを超えたといえるでしょう。それまで、一般的な消費者にどんなシチュエーションでSAKEを飲むのかを問えば、決まって「大好きな日本食レストランで、寿司と一緒に」と言われたもの。これが、少しずつ変わってきているのです。

SAKEは今やサンフランシスコのOutside Landsやナパ・バレーのBottleRockといった音楽フェスでも楽しまれていますし、名高い食フェスであるPebble Beach Food and Wineにも登場し、大きな成功を収めています。

 

しかし、SAKEの功績の中で最も大きな意味を持つのは、日本食以外のレストランで取り扱われるようになったということです。

例えばニューヨーク。エリック・リパート氏のミシュラン3つ星店「ル・ベルナルダン」では、「ベスト・ソムリエ・イン・アメリカ」に選ばれたアルド・ソム氏がSAKEを提供しています。「コスメ」では、メキシコ料理の名シェフ、エンリケ・オルヴェラ氏がグラス単位でSAKEをサーブし、評判を呼んでいます。

そのほか、カリフォルニア・ヨントヴィルの「ザ・フレンチ・ランドリー」では、ミシュラン星シェフであるトーマス・ケラー氏によるSAKEのセレクションが楽しめますし、このリストはさらにグラント・アケッツ氏によるシカゴの「アリニア」、サンフランシスコのフレンチ店「アトリエ・クレン」へと続いていきます。

非日本食ジャンルにおけるSAKEの勢いは留まることなく、サンフランシスコの「ハイ・トリーズン」をはじめとした数々のワインバーもSAKEを提供することで結果を出しています。

 

アメリカにおけるSAKEの成功にはあらゆる理由を並べることができるでしょうが、ソムリエの多くが言うのは、「考えるまでもなく、SAKEは万能で、ユーザー・フレンドリーな飲み物」だということ。

ソムリエ・コミュニティとSAKEの関係も新たなステージへと突入しました。世界最高峰のソムリエ資格試験であるコート・オブ・マスター・ソムリエでは、SAKEの歴史や生産方法、提供方法が必修となっています。

SAKEは、日々新しいエリアへと突入しています──この動きは、日本の伝統的なこの飲み物が世界で躍進してゆくために、必ずプラスになるといえるでしょう。

アメリカ初のSAKE専門店「True Sake」創設者であるボー・ティムケンが最近、とあるイベントでこんなことを言っていました──「スーパーボウルにSAKEの広告が出るまで、私は休めない」──この言葉に乾杯しましょう、私たちはみんな、同じ気持ちでいるのです。