Written by Saki Kimura
2015年に誕生したサンフランシスコ初のSAKEブルワリー・Sequoia Sake Breweryは、アメリカ人のJake Myrickさんと、日本人のNoriko Kameiさんご夫妻が営んでいます。
日本人の奥様がSAKEを造っているということは、日本での酒造りのキャリアがあるのでは? と早合点してしまいそうになりますが、実はお二人はIT業界出身。SAKEを造るのはまったく初めての経験だったと言います。
「仕事の関係で、家族で10年間日本に住んでいたときに、夫婦二人でSAKEにハマりました。特に好きだったのが生酒。ところが、アメリカに戻ってきてから、こちらでは生酒が手に入らないことがわかって。仕方なく、自分たちで造ることにしたんです」(以下、Norikoさん)
生酒とは、酒造りの最後に火入れ(加熱殺菌)をしていないSAKEのこと。酵母が生きたままの、フレッシュでダイナミックな味わいが魅力です。
一方で、酵母がSAKEの中で生きているということは、時間の経過や温度の変化によって品質が変わってしまいやすいということ。このため、日本からアメリカへ生酒を輸出するのはとても難しいと考えられています。
日本から入ってこないということは、ローカルビジネスを行ううえではアドバンテージになります。「自分たちの好きなものが、それまでアメリカにあったSAKEとの大きな差別化になったんです」と語るNorikoさん。娘さんがハイスクールを卒業したのをきっかけに、お二人はそれまで趣味として醸造していたSAKEでビジネスをスタートします。
生酒シリーズ「Sequoia」の主な販売先は、サンフランシスコ市内や近郊のレストランと酒販店。クラフトビールに始まるこの土地の〝Localへの愛〟は、ローカルでの販売に特化したフレッシュな生酒とうまく結びつき、製造量は、ブルワリー設立当初の2015年から、毎年約2倍の伸びを見せているといいます。