Book Review:
管理栄養士Hanakoがおすすめ! SAKE好きの必読書
『酒好き医師が教える最高の飲み方』

Written by Hanako

「おいしかった! 楽しかった!!」と思ってお酒を飲んだはずなのに、それが悩みや不安の種になっていることはありませんか?
私個人もお酒の失敗は数知れず、何度「もうこんなに飲むのはやめよう」と思ったかわかりません。
さらに、年を重ねるにつれて気になる健康問題。20代のころは飲んだ翌日でも元気いっぱいだったはずなのに、30代に突入し翌日の不調を感じることは少なくありません。
人生100年時代、30代でこんな状況ではこれから先いったいどうなるやら……と、さまざまな不安がよぎります。

そんな中出会ったのが酒ジャーナリスト・葉石かおりさんの書いた『酒好き医師が教える最高の飲み方』です。


SNSで簡単に検索できるようになった現代、健康情報はごまんとあふれていますが、中には出どころがわからないものも多くあります。
一方この本では、さまざまな分野の医師や専門家が監修し、科学的根拠に基づいたお酒との付き合い方が語られています。しかも、登場する方はみんなお酒が大好き。飲む人の気持ちを十分に理解したうえでの提案は押しつけがましくなく、自然と言葉が入ってきます。飲酒習慣がある方には必読書と言ってもよいでしょう。

健康面だけを考えると、SAKEは絶対的によいと言えるものではありません。
しかし、漠然と「よくない」と捉えてしまうのではなく、きちんと「知る」ことによって、もっとお酒の楽しみ方が広がるのかもしれない。そんなことに気づかせてくれる一冊です。

■SAKEで生活習慣病を改善!?

本書の中でも印象的だったSAKEについての健康知識を、一部要約してご紹介します。

■生活習慣病の改善に効く

「日本酒には栄養価に富む微量成分がたくさん含まれています。これらには抗酸化作用や血液凝固抑制作用、抗がん作用を示す活性物質が存在し、生活習慣病を予防してくれます。毎日”適量”飲むことは健康面にいい影響を及ぼします」(滝澤行雄さん・秋田大学名誉教授)

滝澤さんは長年SAKEと健康の関係について研究しており、『1日2合日本酒いきいき健康法(柏書房)』といった著書も上梓している方。ご自身も毎日1.5~2合のSAKEを飲むようにしているそうです。

SAKEは、酒類の中でもアミノ酸の含有量がダントツ。
髪、爪、皮膚など、私たちは頭の先からつま先までタンパク質でできており、それらはアミノ酸で構成されています。SAKEには体内で生成できない必須アミノ酸がバランスよく含まれていますが、例えば、グルタミン酸、システイン、グリシンからなる「トリペプチド」は抗酸化作用があり、悪玉コレステロールを除去し、虚血性心疾患を予防する効果があるという研究結果も出ているとのこと。健康効果の期待できるアミノ酸が二つ以上結合したペプチドは、純米酒に最も多く含まれているそうです。

参考:タンパク質とアミノ酸とペプチドの違い


そのほかにも、この本ではSAKEから以下のことが期待できるという研究結果も得られていると語られています。
・がん細胞の増殖抑制
・学習、記憶能力の改善
・虚血性心疾患の予防効果

ただし、ここで述べた健康効果はあくまでも適量であることが前提です。
適量とは、SAKE1~2合(180~360ml)と提示されています。

■SAKEを「百薬の長」にするために~管理栄養士的アドバイス~

結論としては

「適量飲むこと、休肝日を作ること。そして食生活に留意して適度な運動をすること」

以上!!

なぜそうなのか、その理由はこの本に詳しく書かれています。わかってはいてもなかなか実践するのは難しく、みんな頭を悩ませているのは承知ですが、意識するだけでも結果は違ってくるはずですよ。

・健康診断を受けましょう
以前の記事でも「SAKEを健康によいものにするか、悪いものにするかは自分次第。そのために大切なのは、自分をきちんと観察し、自分の身体の状態を知ること」と述べました。
本書にも書かれていますが、健康診断を受け、まずは自分の値を確認しましょう。
しかしここで注意!! 健康診断でよい結果を残そうと、短期間だけ食生活や飲酒量気を付ける方がいらっしゃいますが、あまりおすすめできません。
そもそも健康診断の目的とは、よい結果を出すことがはなく、現在の健康状態を把握することです。
普段の生活が整っていなければ、早期発見できず、疾患を見落とすことにもつながるので、健康診断前に極端な節制はしないほうがよいでしょう。

・総飲酒量を減らしましょう
「休肝日なんて無理」とおっしゃる方、非常に多いです。
休肝日を作るのももちろん良いですが、別の日に倍の量を飲んで最終的に総飲酒量が増えてしまっては休肝日を作る意味がありません。飲んでいるうちは楽しくなって量がわからなくなってしまうものです。瓶から注ぐとついつい飲みすぎてしまうので、自宅で飲む機会が多いのであれば、徳利や片口に移して飲むと飲んでいる量が把握しやすくなります。肝機能の数値が基準よりも高い方、休肝日なんて無理と思っている方はまずは「1日3合を2.5合にする」など、総飲酒量を減らすことから意識してみましょう。

■知ることから始まる健康管理

本書を読んで個人的に最もおもしろいと感じたのは、「検証!酒にまつわる『なぜ?ホント?』」でした。
「鍛えれば酒に強くなる?」「酔うと同じ話を繰り返すのはなぜ?」──お酒好きなら一度は考えたことのある「あるある」とでもいいましょうか、素朴な疑問に対しても科学的根拠に戻づいて解説してくれています。

また、生理、妊娠、更年期を経験する女性とアルコールの付き合い方も参考になりました。お酒に強い・弱いに個人差はあるものの、男性に比べて影響を受けやすいのは事実。ひと月の中でもリズムが変わり、ライフステージによっても変化していく中で何に気を付ければよいのか、どんなリスクがあるのかを知ることができ、今後の備えのために役立てることができます。


SAKEが好きな方は、SAKEへ向ける愛と同様、自身の体のケアも怠らないこと。自分の健康は自分で守るほかありません。そしてこの本は、あなたを守ってくれる一冊になるはずです。
まずはSAKEを飲むことであなたの健康にどんなメリット・デメリットがあるのか、この本を読んで知っていきましょう!