SAKEビギナーのAyaとTomo(Tomoko)がSAKEを楽しむためのノウハウを、
利酒師Sakiから伝授してもらうコーナー「SAKE 101」。
SAKEに興味はあるけどなんだか難しそう……と思っているあなたも一緒にSAKEのことを学んでみませんか?
今回は、「そもそもSAKEが美味しく感じられない」というAyaのお悩み解決編。
SAKEはちょっと苦手、と感じる理由はどこにあるんでしょうか……。
Edited by TOMOKO
今回から、みんなにSAKEについてレッスンしていく唎酒師のSakiです!
早速だけど、SAKEについて疑問に思っていることを教えてほしいな。
あの、実は……わたし……。
Ayaさん、どうしたの? 神妙な顔して…。
とにかく味が苦手です。喉が焼けるような感じがして……。
Ayaさんとはちょっと違うけど、わたしもSAKEをおいしくないと感じることがありますよ。
わたしは普段芋焼酎を飲むんですけど、芋焼酎と合うおつまみでも、SAKEと合わせると、おいしく飲めなくなる印象があるんです。SAKE自体がおいしくないっていうより、一緒に食べるおつまみとSAKEが喧嘩して、ごちゃごちゃするなぁって思っちゃう。
エッヘン、では、SAKEをおいしくないと思ったときの最大の解決策を教えてあげましょう。
え、そんなものがあるんですか!?
ズバリ、このわたし……Sakiにあげる!
いやいやいや。アナタ、一応、唎酒師なんですから!
私欲よりもSAKEへの理解を広めることを優先して!
おいしくないなら無理して飲まずにわたしにくれたらいいのになって思っちゃうんだよねぇ……。
そんなこと言わずに…(涙)
みんながSAKEをおいしそうに飲んでいるのがうらやましいから、自分もおいしく飲めるようになりたいんです!
SAKEがおいしくないと感じるのって、どんな場合があるんですか?
大きく分けると、
1.飲み手に問題がある場合
2.SAKEに問題がある場合
の2種類の原因が考えられるかな。
えぇっ、飲み手にも原因があるんですか?
SAKEがおいしくないのは、わたし自身のせいだった…!?
そう。もっと言うと”飲み方”に原因があるの。
例えばAyaさんは普段、SAKE以外ならどんなお酒を好んで飲むの?
コークハイが大好きです。
ウイスキーの味が苦手で、コーラの味でごまかしているんですけど。
なるほど。Ayaさんは味だけじゃなくて、お酒に喉ごしを求めているかもしれないね。顎を上げて、お酒をグビグビ飲む癖が無意識にあるんじゃないかな? その飲み方だと、SAKEが喉に直接あたるので、喉が焼けるような感覚になるんだよ。
SAKEを飲むときは顎を引いて、舌にSAKEの味わいを広げて飲むと、お米のおいしさが感じられる。喉が焼ける感じが緩和されると、Ayaさんが苦手に感じていた味も変わるかもしれないよ。
へー! 飲み方によって味の感じ方が違うんですね。
ちなみに、SAKEに問題がある場合はどんなときなんですか?
SAKEに問題があるというより、SAKEの”保存状態”に問題があるということなんだけど…。
Tomokoさんが普段SAKEを飲むのはどういう場所なの?
はじめてSAKEを飲んだときは学生だったので、安い居酒屋のチェーン店で熱燗を飲んだような…。それまで、芋焼酎のロックや水割りを飲んでいたので、あったかいお酒に衝撃を感じたことと、居酒屋の濃いめの味付けのおつまみに合わないな~と思ったのを覚えています。
すべての安い居酒屋チェーン店が悪いっていうわけじゃないんだけど、そういうお店では、
1.大量生産された安価なSAKEを置いている
2.お店自体にこだわりがなく保存状態が悪い
っていう可能性があるよ。
やっぱり値段が安いSAKEはおいしくないんですか?
安くてもおいしいSAKEはたくさんあるんだけど、安価なものの中には醸造アルコールが多く添加されているものがあって、アルコール感が強く、おいしくないと感じてしまうことがあるの。
また、お店にSAKEへのこだわりがないと、正しく保存がされていなくて、味が大きく変化して美味しくなくなってしまうこともあるかな。
酒造の人たちが一生懸命SAKEを作っても、お店がSAKEの魅力を損ねてしまうことがあるんですね。
ちなみに、燗で飲む場合も適温があるの。
たとえば、最もお米の甘みが開く温度帯は人肌くらいの35℃だと言われているんだよ。
わたしが学生のときに飲んだお店では、徳利を持てないくらいアツアツの熱燗を出してたけどなあ。
温度を上げすぎるとSAKE本来の甘みが低下したり、アルコールのにおいがきつくなるので、おいしさを感じづらくなるんだよ。
安価な居酒屋チェーン店では、「熱燗はカンカンに熱して提供するもの」と認識してしまっているお店もあるんだろうね。Tomoさんも、はじめにそういうお店でSAKEを飲んだから、「SAKEはおいしくない」っていうイメージができてしまったのかもしれないね。
第一印象が悪かったんですね。
そうだね。
わたしがSAKEと出会ったのは、両親と一緒に行った和食のお店だったの。提供されたSAKEがおいしくて、SAKEが大好きになったんだ~。
その後、安いチェーン店でSAKEを飲んでも「SAKEは、本当はもっとおいしいはずだ」と思ってた。
うらやましい……まさにSAKEの英才教育!?
わたしたちはSAKEとのはじめての出会いは終わってしまっているので、もう美味しいSAKEに出会えないんでしょうか……? そんなのショック!!
いやいや、そんなことはないから大丈夫!
二人とも、日本にはどのくらいSAKEを製造している蔵があるか知ってる?
え~、知らないな〜。
うーん……。
1000くらいですか?
少しずつ減少傾向にあるけど、それでも1500ほどの蔵があるの。
せ、1500!? そんなにあるんだ。
その蔵それぞれに、普通酒、本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、生酛造り、山廃造り……などの種類があるから、販売されているSAKEの種類はとてもたくさんあることに。
それだけたくさんのSAKEがあるんだから、絶対に自分の好みに合う一本はあるはず!!
たとえばコークハイがお好きなAyaさんは、すっきり淡麗で、水みたいにスルスル飲めるSAKEがお口に合うと思う。伝統的には、新潟などに多いタイプのSAKEだね。
芋焼酎をよく飲むTomoさんには、旨味がある関西地方のSAKEが好みに合うんじゃないかな。
SAKEを作る地域によって、味も違うんですか?
最近は技術の進化などによって、土地ごとの傾向は薄れてきているんだけど、歴史的に、SAKE造りを行っていた冬の食事に関係があるという説があるんだよ。
たとえば冬に雪が積もる地域は、作物がとれず保存食を食べる傾向にあるから、その保存食の塩味に合った、淡麗ですっきりしたSAKEが多く造られるの。
冬に雪が積もらない地域では、他の季節と変わらず、魚や野菜が獲れるから、それらのおかず・おつまみに合う、「ごはん」のような味のしっかりしたSAKEが多く造られているんだ。
でも、すっきりとか淡麗とか、お店のメニューを見ても、同じような説明ばかりで違いがわかりにくいんですよね…。
どうやって選んだらいいんですか?
それはもう、店員さんに訊きましょう!
SAKEにこだわりのあるお店に行くと、かなりの確率で説明好きな店員さんがいるはず。そういう人に、普段飲むお酒やこれからオーダーするおつまみを伝えて、おすすめのSAKEを選んでもらうといいよ。
また、お店で飲むとたくさんの種類を少しずつ楽しめるから、その分いろいろなSAKEと出会えるんだ。そのとき「おいしい」と感じたお酒の特徴を覚えておいて、「なるほど、わたしは『吟醸』が好きなんだな」「東北のお酒がおいしいと感じる気がする」というように自分の好みを細かく分析していくと、次にお店に行ったときに、おいしいお酒を見つけやすくなるよ!
なんだか、おいしいSAKEが見つけられる気がしてワクワクしてきました!
ちなみに、Tomokoさんがはじめに言っていた「焼酎に合うつまみがSAKEには合わなかった」というコメントだけど……。食べ物も、お酒のおいしさを左右する重要なポイントのひとつ。
これついては、また次回以降に詳しく説明するね!
●○まとめ○●
・飲み手に原因がある場合:飲み方注意!飲むときは顎を引いて、舌にSAKEの味わいを広げて飲む。
・お酒(お店)に原因がある場合:保存状態、提供する温度にもこだわりを。
・お店で飲むときは、迷わず店員さんに相談。「おいしい」と思ったSAKEをメモして、自分の好みを分析しよう。