Edited by Saki Kimura
SAKEのファンは、エモーショナルだ、と思うことがよくあります。自分の愛を強く信じていて、時としてムキになってしまう。
そんな印象から、2019年6月、TwitterとInstagramでちょっとした企画をさせていただきました。
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春に若波の純吟に衝撃を受け
夏はFY2に感動し
秋は赤蜻蛉に夢中になり
冬は鍋の友に買った蒲公英に酔いしれる
全部同じ蔵のお酒と気づいた時
僕は日本酒に恋に落ちた
* SGL@浅倉さんより
大好きなお酒へのラブレターのつもりで書きました。
評価頂きありがとうございます。
* 評者コメント
春夏秋冬それぞれの、商品名も手伝ってどこかノスタルジックなエピソードが、「同じ蔵の商品だった」という結末につながってゆく。季節を愛する日本で生まれたSAKEと、ひとつの蔵から多様な味わいが生まれるというその奥深さを、短い中に美しくまとめた感性と技術のバランス感覚にほれぼれし、優秀賞とさせていただきました。
ちなみに、優勝商品のSAKEとしては、和歌山県の酒販店・地酒みゆきやさんのご協力のもと、浅倉さんの”味の好み”を分析し、三重県・瀧自慢酒造の「瀧自慢 辛口純米 生酒(29/30BY)」をプレゼントさせていただきました。お口に合ったらうれしいです!
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HOSHITARO@SAKEチャンネルさん(@SAKETUBER/Twitter)
──日本で一番旨い日本酒の蔵で働こう。そう思った7年前。全国探しまわったある日、実家で生まれて初めて親父とサシで呑んで冷蔵庫から出てきたのが今働いている蔵の酒。
* 評者コメント
ずっと探し回っていたものが意外に身近なところにあった、なんて、SAKE版メーテルリンクの「青い鳥」ですね。
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──気づいたら好きになっていて、いつの間にか生活の一部になっていた。今では日本酒なしの人生なんて考えられない。なんて、ほんとの恋愛みたい😂
* 評者コメント
明確なストーリーがあるわけではない、それが逆にある種の恋愛のかたちと親和性を見せてしまう、というのにしみじみと来ます。
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「私の心を奪ったSAKE」
──ニューヨークのとある街で、パワフルなイタリア人の家系に生まれた私は、幼いころから日本の文化に強い魅力を感じていた。SAKEが私の前にふと舞い降りたのは、映画とワインの世界を探索していた20代前半のころ。ニューヨークのジャパン・ソサエティのメンバーとして、この島国のあらゆる素晴らしい芸術に触れていた私は、2014年、ジョン・ゴントナーと10の酒蔵が開催するイベントに参加した。どのお酒もおいしかったけれど、中でも私の進む道へ燃料を注ぎ込んだのは「獺祭」だ──あれから5年、私は今ここにいる。ありがとう!
* 評者コメント
True SakeメンバーKJの投稿。ワインのスペシャリストである彼女は、SAKEの味わいの表現もとても洗練されているのですが、この投稿も言葉の使い回しが小粋で、読みながら魅了されました。
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HAL 公邸料理人さん(@HAL87350031/Twitter)
──ウザい先輩の説教で連れてかれた居酒屋で飲んだ
池月「うすにごり」
最良の出会いと最悪の思い出が混在する至極の一杯。
* 評者コメント
よく、気分や雰囲気は食べ物や飲み物の味に影響をするといいますが、わたしも「本当のおいしさは、どんなメンタリティにも損ねられない」という経験をしたことがあります。もちろん個人差はあると思いますし、最悪のシチュエーションの中で最良の出会いを逃さなかったのは、食に対してストイックなHAL 公邸料理人さんだからこそ、なのかもしれません。
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二十歳の正月の久保田。
今はなき先生と飲んだ出羽桜。
帰郷して向き合った新政。
初めてのGEMで最後に飲んだ賀茂金秀。
ひとつひとつが星になり輝いて、恋に落ちるたびに空の星座は姿を変える。
また日本酒に恋してる。
追いかける。
いつまでも、何度でも。
* 評者コメント
SakeTips!に”酒詩”を寄稿してくれているRyosukeさんの投稿。一つひとつのSAKEとの刹那の出会い、その儚さと、だからこその美しさを感じられる一編です。
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Meiさん(@sake_mei_mei/Instagram)
──22歳のとき、フロリダの家を出て独立することを決めた私は、生活を賄うための仕事を探していた。日本食レストランばかり応募していたのは、それしか知らなかったからだ。ラッキーなことに、そこまで長く待たされることもなく、私はサンフランシスコの金融街に位置するRoka Akorという、和食のエッセンスを取り込んだ料理を扱うレストランのオープニングスタッフとして働くことが決まった。ゼロが3つもつくような高級店で働くのは初めての体験だ。それまで私は、ローカルで、カジュアルで、かしこまる必要もない、家族経営のレストランでしか働いたことがなかったのだ。Roka Akorはハイエンドな食事はもちろん提供方法にも気を配っていて、スタッフは料理と飲み物についてしっかりと学ぶことが必要だった。さもなければ、サーバーになることはできない。より低いレベルのポジションが与えられ、チップもほとんどもらうことができないのだ。
必修トレーニングのひとつとして、私たちはSAKEについて学ぶことになった。エリック・スワンソンという講師がやってきて、私たちにSAKEのいろはを教えてくれた。それが、とてつもなくおもしろかった。お米を削る? どうやって? 一粒一粒のお米を全部、同じ割合で削るなんてできるの? 当時の私には想像もつかなかったし、トレーニング中に飲んだ興味深いお酒の味をどう味わえばよいのかもよくわからなかった。すると、突然のひらめき。トレーニング終了後、私はエリック・スワンソンの元へゆき、聞いてみた。「どうやったらあなたみたいになれるの?」──つまり、どうやったら彼みたいにSAKEについて語れる人になれるの? と。彼は少し固まって、最終的にこう答えた──「ともかく飲み続けなさい」。この話を伝えたとき、母はあまりうれしそうな顔をしなかった。
* 評者コメント
こちらもTrue Sakeから、Meiの投稿。偶然の出会いからSAKEの世界へと飛び込んで行った彼女のバックグラウンドが、素直でストレートな語り口で綴られています。”Just keep drinking(原文)”、なかなか真理なのでは。わたしもともかく飲み続けていこうと思います(笑)。
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Saki Kimura(@sakeschi/Twitter・@sakekimura/Instagram)
──わたしが日本酒を初めて飲んだのは成人して間もないころ、某料亭にて。両親から「ちょっと飲んでみる?」と差し出されたお猪口一杯の美しさに衝撃を受け、その後いくら学生コンパの飲み会で悪酔い酒を飲まされようとも、「日本酒はこんなもんじゃない」と思い続けていた。これ、なんの銘柄だったのかまったく覚えていないんですよね。なので当旅は「あのとき僕を恋に落としたあの子をずっと探し続けている」みたいなロマンチックに見せかけて、「この世にはいろんな美人がいるな! 最高だ!」みたいなノリです。反省はしています。
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愛に順番をつけてはいけない、と思いつつ、お互いの愛をおもしろがり、よろこび合えるようにという願いから立ち上げた当企画。紹介させていただいたのは一部ですが、ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました。
あなたがSAKEに恋に落ちた瞬間は、どんなときでしょうか。応募期間は終わってしまいましたが、いつでも、SakeTips!宛に教えていただければうれしいです。