KJの日本旅行記 Part 1
ちょっと奇妙な東京SAKE事情!?

Written by KJ Sakura
Translated by Saki Kimura

小さいころからずっと、日本に憧れていました。雑誌で読んだ、江戸時代のキレイなティーポット。床に座ってごはんを食べる、昔の習慣。ビッグバードが畳の上で戯れ、かぐや姫が月に帰るのを見送るセサミ・ストリートのエピソード「Big Bird in Japan」を見たときの感動は忘れられません。10代後半にソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」を観たり、禅宗を学んだり、ニューヨークの日本コミュニティで日本の芸術に触れたりすることで、この興味はますます強くなっていきました。

そして30代前半となったいま、いよいよチャンス到来! WSET(Wine & Spirit Education Trust)のSAKEエデュケーターとして、エキスパートの仲間たちと一緒に日本を訪れる機会をいただいたんです。
日本を訪れるのは、まったくの初めて。SAKEスペシャリストとしての指導スキルとキャリアに役立てるのはもちろん、何十年ものあいだ私の心をくすぐり続けている不思議なものの正体を見つけにゆかなければ! と意気込んでいました。

というわけで、WSETのメンバーと会う前の二日間は、一人で東京を回ることに。羽田空港に到着して、荷物を受け取り、ポケットWi-Fiをゲットし、PASMOを買ったら、いざ、東京メトロの旅へ! 2時間後には、新宿エリアにあるホテル「The Knot」に到着。海外からの旅行者であふれるロビーに、ちょっとホッとした気分になりました。
いまにもベッドに倒れこみそうな体をなんとか奮い立たせ、ホテルから歩いて5分、パーク・ハイアット内のニューヨーク・バーへ。都内でも最高級のバーのひとつとして知られるこのバーは、ジャズ・ライブと絶景が楽しめる名スポット。信じられないほど美しい夜景に散々「う〜」とか「あ〜」とか言ったあと、ようやく席に着き、スパークリング・ウォーターを注文しました。
サーバーにサンフランシスコから来たことを伝えると、たまたまそれを耳にした近くのカップルが、「僕たちもサンフランシスコ出身だよ!」。偶然の出会いに会話を弾ませたあと、ようやくメニューを開き、ずらりと並ぶカクテル、ワイン、スピリッツのリストにうっとり……ところが、SAKEのメニューは大吟醸1種類と、勝山酒造の3種飲み比べセットしかありません。ここは日本の首都なのに、なんだか変なの。アメリカの大都市の高級レストランと変わらないじゃない──このアイデアは、今回の旅全体のテーマとなってゆきました。

ひと晩ぐっすり眠ったあと、3万1000歩におよぶ東京探検をスタート! 何せ、この巨大な街にいられるのはたった一日なので、なるべく多くのものを見て回ろうと必死だったんです。

まずは満開の桜に想いを馳せながら目黒川沿いを歩き、中目黒のONIBUS COFFEEでコーヒーを一杯。一月初旬の気候は、空想にふけるにはぴったり。カプリ島の一角を思い出させる街並みを散歩したあとは、渋谷の交差点、そして表参道・原宿エリアへと向かいました。

ショッピングを済ませたあと、3時からは四谷三丁目の「鎮守の森」のSAKEテイスティングに参加。日本の政府ともプロジェクトを行っているという男性が、スパークリングからプレミアム・セレクション、古酒までをサーブしてくれました。
私にとって、彼の話はほとんど馴染み深いものばかりでしたが、SAKEの「カテゴリー」についての見解はちょっと新鮮でした。いわく、いまの若い造り手たちと政府は、「カテゴリー」がSAKEのセールスやクリエイティビティの弊害になっていると考えているんだとか。消費者視点で考えれば、わからないでもない意見です。たとえ日本語が話せたところで、SAKEのラベルを解読するにはそれなりの知識や情報が必要だろうし。……でも、一生懸命カテゴリーを覚え、SAKEのスペシャリストになった私は、それをもとに味わいをマッピングできるからこそ、新たなお客さんを開拓できていると感じるのが正直なところ。
というわけで、カテゴリーを完全に削除することには賛成しかねるんですが、カテゴリーの偏見なしにSAKEそのものを味わい、酒造やブランドの名前で覚えるというのがよいアイデアだというのは理解できます。精米歩合よりも、味そのものと製造方法にフォーカスしたマーケティングを行う低アルコール酒・今西酒造「Dio Abita」は、まさにそのよい例でしょう。

夏にTrue Sakeへインターンに来ていた友達・あかりに会う予定があった私は、颯爽とお店を後にしました。お酒を一杯飲んだあとは、彼女に誘われて、人気ラーメン店の行列へ。機械を使ってラーメンを使い、懺悔室みたいなところで食べたこのラーメンが、なんとか私をホテルまで歩かせるエネルギーになってくれました。

翌日には大阪へ発ち、SAKE教育業界のリーダーや、世界中からやってくる6人のエデュケーターと会うことになります。つむじ風のような二日間の東京旅でしたが、ここからは新幹線の車窓から贅沢な景色を眺めるような旅に切り替わります。

というわけで、次回はWSETのツアーについてレポートしたいと思います。お楽しみに!