SAKEカクテルを初体験!@未来日本酒店
想像をはるかに超えるおいしい世界

Written by Keita Okubo

正直にいうと「SAKEカクテル」という存在に懐疑的でした。

・すでにおいしいものを、わざわざ変える必要はあるのか?
・洋酒があるのに、無理してSAKEつかっていない?

などなどの理由で、素通りしていました。

間違いでした。SAKEカクテル、すごいです。おいしいだけじゃない、お酒がめちゃくちゃ「楽しく」なります。

SAKEバーテンダーのいる「未来日本酒店」へ

渋谷PARCOの地下一階、飲食店エリアにある「未来日本酒店」
こちらは「飲める酒屋さん」として、角打ちのような雰囲気でカジュアルにSAKEを楽しめます。PARCOにSAKEの酒屋さんって、なんかすごいです。

地下ながら開放的な雰囲気。16:00くらいにおうかがいしたので、お客さんはすくなめでした。

基本メニューはこんな感じ。「酒屋さん」なので気に入ったお酒はそのままボトルで購入できます。

こちらが今回の目的、カクテルです。新潟県・朝日酒造「久保田」推しですね。

作ってくれるのは、バーテンダーで日本酒料理研究家のももたそ(Momo Matsubara)さんです。

ここまで、僕は「カクテル=いろいろ混ぜてカラフルでかわいくて映えるもの」と思ってました。いや、そういうカクテルもあると思います。

しかし「すみません、私のカクテルはぜんぜん派手じゃないです……」とのこと。

「新しい味を作るというより、お酒にすこし化粧をして『そばかすを隠してあげる』イメージ。お酒のもつおいしさを引き出すための手法が『カクテル』です。なので、すごく地味ですよ」(ももたそさん)

1杯目「久保田 千寿 」と山椒・ペパーミント

(……確かに、地味です)

元のSAKE:久保田 千寿
甘さ控えめのしっとりとした味にドライな後切れがあります。そのままでも全然いける。「辛口」とよばれそうな、いわゆるおじさん酒です。

カクテルでは、これに山椒とペパーミントと合わせています。見た目はすこーし山椒の粉が見えるくらい。

……なにこれおいしい。

しっとりした味わいはそのまま、後半の苦味がさわやかな味に変わっている。おじさん酒が、20歳くらい若返っています。

「ミントと山椒を加え、シェイクすることでSAKEに香りを移したカクテルです。久保田のよさを出しつつ苦味にマスキングをするイメージ。ちなみにミントや山椒はアルコール添加のお酒の方が合いますよ」

SAKEカクテル、地味だけどすごいです。

2杯目「久保田」に「酢」を2、3滴

続いての主役はこちら「カカオビネガー」

「お酒1杯に対して、カカオビネガーを2、3滴垂らすだけのカクテルです。せっかくなので飲み比べしてみませんか?」

(2種飲み比べ、ビネガー投入前後とやったのでカウンター上がごちゃごちゃに)

お酒はこちらも久保田。左は生酒の「翠寿」、右は山廃造りの「碧寿」。そもそもですが久保田っていろいろな種類、造りをしているのですね。

……超おいしい。え、どうした? すごくまろやかで甘みが増している。

(ちなみにビネガーだけでも味見。確かにおいしいけど、まだ「酢」です)

「最近のSAKEは『酸』があるものが多いので、ビネガーを足すとおいしいですよ。ただの水に酢を加えてもこうはならない。SAKEに複雑な味があるから、1+1=2以上のおいしさになるんです」

そう、まさにそう。1+1が2じゃなくて、5とか10とか、断然おいしい。最後の方にも、カカオの風味がちりっと入ってまたいいです。

ちなみにフルーツビネガーなどでも可能だそう。ビネガー買います!

3杯目「ひねたお酒」にヤクルト!?

続いては未来日本酒店のオリジナル商品「泉城之前1818-4」(天領盃酒造@新潟)。こちらのお酒すこしワケあり。瓶詰め後時間が経ってしまい、少し「老香(ひねか=SAKEの劣化臭)」がでてしまったものだそう。

そのまま飲んでももちろんおいしいものの、確かに微かなタクアンっぽい臭いや、エグみがあります。

「ここに、ヤクルトとライムを1滴ずついれます」

飲んでみると……すごい、嫌なところが消えている。最初の老香はライムの清涼感に、後半のエグミはヤクルトのあまみがぴったりカバーしています。

まるで手品です。

「SAKEって味が本当に繊細なんです。だから余計なことはしなくてよくて、ほんの一滴で、欠点をカバーできます。もともとSAKEバーで長年働いていましたので、悪くなったお酒を『更生』させるのは得意ですよ」

4杯目:「山椒」をつぶしながら熱燗をつける

SAKEカクテルは「熱燗」もあります。

「生の山椒をつぶしながら燗にしました」といただいたのは、石川県・白藤酒造の「白菊」。おちょこを口に近づけると、フレッシュな山椒(生山椒だからフルーツみたい!)の香りがあり、飲むとスーッと鼻に抜けます。そのままの流れでお酒のあまみ、こっくり感が。

そうか、熱燗の最初の「むわっと」したお酒感が山椒に置き換わっているのか。すごい、これありです! 家でやりたい。

どっしりタイプの「HINEMOS ICHIJI」も生山椒燗に。さらにきのこキムチと一緒にいただくと、あまみ、旨味がキムチと相乗効果でアップ、後あじは山椒の刺激に置き換わります。

お酒はもちろんですが、バーテンダーのももたそさんがすごい。「味変」とかそういうレベルではなく、味を感じる要素を自由に出し入れしています。

デザート:甘酒+オリーブオイル

デザートにいただいたのが「甘酒」。上にオリーブオイルとミント、胡椒がかかっています。今日もっともカクテルっぽい見た目です。

……おお、おもしろい。甘酒だけど、甘酒特有の甘ったるさがなく、するりといけます。余韻もかるいです。

「上のオリーブオイルの層が先に口に入ってコーティングし、そこにどろっとした甘酒が入ってきます。口のなかで味の感じ方が変わっていきます」

SAKEカクテル。そもそもの認識が変わった

(そのほかにもいろいろいただきました)

冒頭にあったSAKEカクテルの認識が、かわりました。

 ×SAKEでカクテルっぽいおいしい飲み物をつくる
 ◯SAKEのいいところを引き出してより美味しく飲む

だったのですね。本当におもしろい。

また、SAKEカクテルって「お酒飲まない人」向きだと思ってましたが、むしろお酒好きな人、SAKE好きな人こそ体験してほしいです。笑ってしまうほどお酒の感じ方が変わりますよ。