Interview
SAKE COMPETITION 2019でGOLD受賞!
Sequoia Sake Companyは今年、さらに進化する

Written by Saki Kimura

サンフランシスコ初のSAKEブルワリー・Sequoia Sake Companyが、SAKE COMPETITION 2019の「海外出品酒部門」にてCoastal Ginjoで1位(GOLD)、Coastal Genshuで3位(SILVER)を獲得した。

アメリカ人のJake Myrickさん(以下Jake)と日本人のNoriko Kameiさんが夫婦で営むこちらの酒造。JakeはSAKE COMPETITIONが世界で最も大きなSAKEの品評会であり、“SAKEレジェンド”とも呼べる人々が審査員として一堂に会することに触れ、この受賞を「とても光栄で、驚いた」とコメントした。

今回の受賞において注目すべきは、彼らが火入れ商品である「Coastal」シリーズで海外SAKEのトップを獲得したということだ。Sequoia Sake Companyの看板ブランドは生酒である「Sequoia」シリーズ。運搬における品質保持の事情があっての選択とはいえ、火入れ酒で賞を得たことの意味は大きい。

「サンフランシスコでは、生酒である『Sequoia』 シリーズの人気が根強いし、SAKEの“新興市場”においてベストな商品だと思っています。日本のようにSAKEが古くから広く親しまれている地に住む人々にとって、“新興市場”という言葉は奇妙に聞こえるかもしれません。しかし、アメリカ市場のアルコール売り上げを見れば、SAKEはデータにさえなっていないんです。そして、我々にはこれを変える必要がある」

私が初めてSequoia Sake Companyをインタビューしたとき、彼らは正直に「『Coastal』は流通用に造っただけ」と語っていた。その一方で、その品質を向上させるべく、日本の酒造からのアドバイスを受けながら日々努力をしていたのもまた事実だ。授賞式当時、Norikoさんは北海道の酒造にて1カ月にわたる修行の真っ最中だった。

「私は『Coastal』にも確かな地位があり、マーケット・シェアを伸ばしていくと確信しています。『Sequoia』と『Coastal』はそれぞれ違うニーズを満たすでしょうし、それによってSequoia Sake Companyが認知度を高めていけるのはうれしいことです」

Sequoia Sake Companyは、ユニークなラインアップも多いアメリカのローカルSAKEブルワリーの中でも日本伝統のスタイルを重視しているように映る。しかし、「伝統的なSAKEと、そこから逸れるものと、どちらを造りたいのか」という質問に、Jakeは「両方」と答えた。

「コンペティションの会場で、日本の記者の人々に『うちの蔵の商品ではNigori(にごり酒)が人気』と話したら驚いていましたね。Takaraなどの大手メーカーもフレーバー付きのSAKEを造っていますが、それはやはりアメリカの人々がそういうものが好きだから。アメリカと日本のSAKE業界には絶対的な距離があります」

アメリカではほとんどの人がSAKE初心者だ。たとえ伝統的なSAKEを造りたいと思っていても、ビギナーへの入り口として“違うもの”を造る必要性は出てくる。

アメリカで、サンフランシスコでSAKE造りをするにあたっては、伝統的で良質なSAKEを造らなければならないのと同じくらい、革新的なことにも挑戦し続けなければならない。両方やる必要があるわけです」

Jake曰く、「今年は転機となる年」。生産量をこれまでの2倍にするうえ、原料米「Caloro」の商用栽培が認可された──つまり、自分たちだけのために育てられた契約栽培米でのSAKE造りができることになったのだ。1940年以降カリフォルニアでの育成はなかったというこのCaloroは、山田錦のルーツである酒米「渡舟」をアメリカで育種した当初のお米であり、現在アメリカで酒米として一般的に使われているCalroseよりもそのルーツに近い遺伝子を持っている。

認可の連絡を受けたのはSAKE COMPETITION 2019の結果発表の翌日。プロジェクトをスタートするための州や連邦との手続きに4年、カリフォルニア大学デイビス校のグリーンハウスにおける適切な環境を求めての実験的な栽培に3年──計画当初から7年という長い年月を経てのことだった。

「今年の残りの造りに関しては既に体制が整っているので、この賞が商品に影響するということはないと思います。しかし当然、新しいバッチに取り組むたびに賞について考えてしまうでしょうね。賞を取ったSAKEと同じくらいよいものを造り続けることはもちろん、さらに質を高めていくという大きなプレッシャーがのしかかっています」