SAKEはパズルの最後のピースになる

Written by KJ Sakura
Translated by Saki Kimura

正直、ワインソムリエとしてのキャリアの中で、何度めちゃくちゃなペアリングをやらかしたか覚えていません。鉄板の組み合わせはあるんです。ミュスカデと牡蠣、ソーテルヌとフォアグラ、ナパ・バレー・カベルネソーヴィニョンとリブアイステーキ、バニュルスとポット・デ・クレーム……などなど。

それなのに、あと少しでディナーが始まるっていうときに、シェフが突然「今晩のコースに一品付け加えなければならなくなった」なんて言ってきたら? もしくは大事なお客さまが、若いバローロが大好きなくせにアンチョビの塩漬けと刺身なんかを注文したがったら?

常に機敏な思考と迅速な対応が求められるワインソムリエ。お客さまの前では、「すべて私のコントロール下にあります」みたいな顔をしておきながら、頭の中では超あせっているワケです。ヤバイ、ヤバイ、超ヤバイ! どうすればいいの〜⁉︎

そんなとき、ワインが迎えたピンチを華麗に救ってくれるカンペキな答えがあるんです──日本以外のソムリエはほとんどこのカードを使わないんですが。そのカードとは、ズバリSAKEです!

 

SAKEには、ワインができないことができます。例えば、ワインが含む主な酸は下記の4つ。

・リンゴ酸

・クエン酸:柑橘類に含まれている

・酒石酸(タルタル酸):ブドウに含まれている

・乳酸

ワインに比べ、酸度が5分の1ほどしかないSAKE。注目すべきは、乳酸とアミノ酸です。乳酸は酒母の中で重要な役割を果たすもので、生酛や山廃、菩提酛といった乳酸菌主体の造りにおけるスター的存在。一方で、ワインドリンカーが見落としがちなのが、高い比率で存在するアミノ酸──プロテインの構成成分です。 ワインにも微量に含まれているこのアミノ酸、SAKEの中ではテクスチャーや味わいを決める超重要な役割を担っています。

それでは、私のお気に入りのSAKEペアリングの中から、ワインではパートナーを見つけるのが難しい食材との組み合わせをご紹介しましょう。

・アスパラガス × 「太平山 純米大吟醸 天巧 20」小玉醸造@秋田)
→上品なミディアムボディとメロンのような香りがピッタリ。

モーレ・ソース(メキシカン料理のソース) × 「吟香梅 般若刀」一本義久保本店@福井)
→チリやチョコレート、トルティーヤを混ぜたややこしいソースは、唐辛子入りの梅酒と合わせて。

醤油 × 「賀茂泉 純米吟醸 朱泉 本仕込」賀茂泉酒造@広島)
→SAKEのキノコっぽい味わいが、醤油の塩辛くて旨味たっぷりの味わいと相性抜群!

ロックフォールチーズ × 「梵 無ろ過生原酒」加藤吉平商店@福井)
→ピリリと刺激的なクラシックなフランス産ブルーチーズは、濃厚で風味豊かなSAKEとマッチ。 

エポワスチーズ × 「白玉香  特別純米 山廃無濾過生原酒」木戸泉酒造@千葉)
→ファンキーなウォッシュチーズとファンキーなSAKEのファンキーなペアリングは、まさに天国!

アーティチョーク × 「御前酒 菩提酛 純米うすにごり」辻本店@岡山)
→アーティチョークが含むシナリンという物質は、後から口に入れたものをなんでも甘く感じさせてしまう曲者。ここはフルーツ感主体のうすにごり酒に活躍していただきましょう。

 

そして、もうひとつのペアリングの天敵といえば、デザートコース! 繰り返しになりますが、ここで厄介なのがワインの持つ酸度なんです。

酸味を抑え、デザートと同レベルの甘味を補完するには残留糖が必要になりますが、一見相反するこれらの味のスペクトラムを奇跡的に兼ね備えた魔法のようなSAKEが存在します。芳醇かつ甘味も含むコースとペアリングが可能な魔法使いたちは以下のとおり。

豚の角煮/フルーツのソルベ × 「雪の茅舎 純米吟醸 限定生酒」齋彌酒造店@秋田)

チョコレート/ティラミス/ゴーダチーズ/シャルキュトリー × 「Red Maple 2年熟成生詰」(賀茂泉酒造@広島)

季節のフルーツ盛り合わせ × 「上善如水 純米」白瀧酒造@新潟)
→食後酒としてグラッパ「ヴェスパイオーロ」やオー・ド・ヴィーの代わりになります。

 

グルテンフリーで、亜硫酸ナトリウムも含まず、ヴィーガンにとってはパーフェクトな飲みものといえるSAKE。SAKEは、すべての料理とワインが抱える難題を解決してくれます──ペアリングにおいて、SAKEはパズルの最後のピースになるんです!