熱燗、サケボム、そして生酒
The Evolution of Sake in the United States

Written by Eduardo A Dingler
Translated by Saki Kimura

SAKEは日本で長い歴史を持つ一方、アメリカではまた異なる歴史を歩んできました。

アメリカでSAKEが流通しはじめた数十年前。あたりまえですが、この国の人々はそれをどうやって楽しめばよいかを知りませんでした。

今のようにエデュケーションをするような人はあまりいなかったものの、ちょっとしたブームが起こりました。このころの定番といえば熱燗で、多くのレストランで人気メニューとなったのです。何も知らないアメリカのお客さんに、熱燗、ビール、スパイシー・ツナと枝豆を注文させるのはそう難しいことではありませんでした。

しかし今、SAKEはその殻を破り、米国市場でそのポテンシャルを遺憾なく発揮するまでに成長しました。これは、日本でのSAKE事情とのギャップに気づいた流通業の人々が、よりよい商品を流通させようとした努力あってのことです。

おかげで今日のアメリカのレストランや小売店では、数年前にこの地では決して手に入れることができなかった生酒さえお目にかかれるほど。かつては輸送中の適切な管理が保証されておらず、現地の売り手が十分な知識を持っていないことが、造り手に輸出を躊躇させていました。

近年は、アメリカ中のソムリエの尽力、クオリティの高い輸入酒、ディストリビューターによる売り手への教育により、SAKEは主流アルコールの重要なポジションまでのぼり詰めたと言えます。

もはやSAKEは全米のレストランやワインバー、小売店でにも並んでいます。ちょっと前にはあり得なかったことです。好奇心旺盛なファンは新たなアイデアを次々と見出だし、SAKEは日本食以外のレストランでも取り扱われるようになっています。

テキーラにも似たような歴史があります。メキシコ生まれのこのスピリッツは、アメリカに来たばかりころは「飲み会の初めにショットで飲む」というスタイルで若者のあいだに広まってゆきました。最近となっては、より知的な飲み物として認知され、さまざまな種類のテキーラをちびちび味わいながら飲み比べるというスタイルが定着しています。

同じように、黎明期におけるアメリカでのSAKEの楽しまれ方といえば、かの悪名高き「Sake Bomb(サケボム)」。ビール(大抵、サッポロかキリンかアサヒのいずれか)の入ったジョッキにお箸を渡し、その上に乗せたショットグラス入りのSAKEを、机を叩いてビールの中に落とし、一気飲みするというスタイルです。多くの人々がこの方法でSAKEの存在を知ってしまったという事実があるとはいえ、現在は真剣なSAKEファンたちがそこから卒業しています。

ありがたいことに、このゲームはもはやあまり主流ではなく、SAKEはワインと同じく、レストランやバーのメニューにラインアップされるようになっています。プロもアマチュアも熱心にそのニュアンスを熟考し、ありとあらゆるペアリングを堪能しているのです。

SAKEがさらなるエデュケーションとその多様性により、この国でこれからもたくさんの人々を巻き込みながら力強く成長してゆけますように。このすばらしい飲み物のアメリカでの未来に、乾杯!