Written by Hanako
発酵とは微生物の力で良い変化を起こすこと。
私が発酵という世界を愛してやまないのは、
見えないからこそ、今の自分の感覚を信じるしかないからです。
発酵と腐敗は紙一重で、
大雑把に表現すれば、牛乳が発酵するとチーズやヨーグルトに変化するけれども
腐敗してしまうとお腹を壊す原因になる。そこには微生物の良し悪しがあるだけです。
研究所はともかく、普通に生活していく上では顕微鏡をのぞいて
微生物の状態を確認することなどありません。
だからこそ、自分の感覚、本能が大事なのです。
自分が心地よいと思う香り、味など、それこそが今の自分の身体が求めるもの。
「今、ここ」を感じるマインドフルネスという言葉が頻出していますが、発酵の世界をより深く見つめていくと「今」がもっと見えてくるのではないでしょうか。
SAKEも発酵の世界であることは言わずもがな。
各蔵は微生物の宝庫。それぞれ保有する微生物が違うことで
同じ造り方をしていても味が全く異なります。
毎年同じものを量産し続けるメーカー、酒造会社もあれば、毎年味が変化する蔵もある。
それは、どちらもたいへんな苦労をしていると思います。
地球の環境は刻々と変化し、同じ夏、冬、気温や湿度がたとえ同じであっても
微生物の生育状態は一定であるといえません。
工業的にとは言っても、そのような環境下で同じものを作り続けるというのは、絶え間ない努力が伴うものだし、違うものができるといっても、果たしてそれが満足のいく結果になるのかは未知数です。
だからこそ、ピンからキリまであるSAKEの良し悪しなどあるはずもなく、そこに存在するのはそれぞれの感覚の違いだけです。
味の好みは人それぞれ。つまり、保有している微生物もそれぞれ。
だからこそ、SAKEを楽しむということは、肯定も否定もなく、正解も不正解もない、とっても自由な世界だと私は思います。
以下、SAKE好きであることを前提でお話します。
例えば、同じSAKEを好きで飲み続けていたのに、急に好みではなくなってしまった……。
味に飽きてしまったとも考えられますが、もしかすると自分の健康状態に変化があったのかもしれません。
「今」にフォーカスし、感覚が鋭くなれば、SAKEは自分の身体の状態のバロメーターにもなることも考えられます。
そんな風にSAKEを味わう、考える日があってもいいのでないでしょうか。
最後に、過去今までいくつかレシピも紹介していますが、もし可能であれば、一度作ってみてから、もっと自分の感覚に従ってアレンジしてみてください。もっと甘いほうがいいのか、塩味がほしいのか。
SAKEを飲みながら、食べながら、きちんと考えてみてほしいなと思います。
(酔っぱらう前に……)