Book Review:
心ときめくSAKEに出会える一冊
石田洋司『ちょっと知ると、もっと好きになる 日本酒超入門 呑みたい酒の見つけ方』

Written by Yoko

 最近、私の中で第二次SAKEブームが来ています。第一次SAKEブームは20代の頃、当時勤めていた会社の上司から「これを読め」と渡された漫画『夏子の酒』を読んだ後です。あれからもう十数年たっているので、漫画のストーリーの詳細は正直覚えていないのですが、当時の私は漫画で知識と、有名銘柄のSAKEを飲むという体験により、SAKEに詳しくなった「つもり」でいました。

 その後SAKEからは遠ざかり、ビールとワインを楽しむ日々が続いていたのですが、ある日『逆境経営』というとある酒造の社長が書いた本に出会い、またまたSAKEに興味を持つようになりました。第二次SAKEブームの到来です。

 SAKEのことをもっと知りたい、SAKEについて詳しくなりたい! と思い、本を探していたところ、今回の本・石田洋司『ちょっと知ると、もっと好きになる 日本酒超入門 呑みたい酒の見つけ方』に出会いました。一番惹かれたのはタイトルの「呑みたい酒の見つけ方」というフレーズです。そのフレーズを見た時に私は気が付いたのです。ワインやビールについては自分の好みを述べることができるけど、SAKEに関しては自分の好みを知らない! と。好み以前に、そもそもSAKEにはどんなタイプのものがあるのかも知らないのですから、好みがわからないのも当然です。難しい本は苦手なので「“超”入門」というフレーズにも魅かれました。

 この本で参考になったのは、①SAKEの主要4タイプ②自分が好きなSAKEの選び方です。読み始めてすぐに、私は自分がこれまで重大な勘違いをしていたことに気がつきました。私はこれまで十数年、「純米大吟醸」が一番高級で、一番いいSAKEで、SAKEのチャンピオンだから一番「おいしい」お酒なのだと信じていたのですが、高級なSAKEが必ずしも私好みのSAKE、私にとっておいしいSAKEだとは限らないという事実です。

 この本ではSAKEを薫酒(くんしゅ)、爽酒(そうしゅ)、醇酒(じゅんしゅ)、熟酒(じゅくしゅ)の4つに分類しています。まだ実際にこの4タイプのお酒を飲み比べたわけではないので、あくまでも予想になるのですが、私はこの4タイプの中では軽快でスッキリした爽酒が好きなのではないかと思います。私は過去十数年、SAKEを飲む機会があれば、必ず「純米」のお酒を選ぶようにしていました。なぜなら、純米=米100%=添加物が入っていない、いいSAKE=おいしいと信じていたからです。しかし、私が好きなのではないかと予想する爽酒タイプのSAKEに一番多いのは、私が「悪いもの」と思っていたアルコールを添加した本醸造酒なのです。何ということでしょう! 思い込みって恐ろしいですね。

 この本の中で一番おもしろいなと感じたのは、SAKEは実に幅広い温度帯で楽しめるということです。私はこれまでSAKEを飲む機会があれば、必ずと言っていいほど、冷酒を飲んでいました。唯一熱燗を飲む機会といえば、お正月に実家で飲んでいたお屠蘇(と言っても実際はただの熱燗)くらいです。熱燗は口に入れた瞬間の香りも味も苦手で、冷酒の方がスッキリしていて自分好みだと思っていました。この本によると、「燗」と一言で言っても、5度単位でその呼び名が変わるほどに、SAKEの温度による変化は実に多様かつ繊細です。またSAKEの種類によって、冷酒に適しているものもあれば、常温や燗のほうが美味しいものもあることを知って、冷酒が一番美味しいと思い込んでいた私は、SAKEを100%楽しめていなかったのだと、とても損をした気分になりました。

 私はまだまだSAKE初心者なので、まずは自分の好みのSAKEを把握することが当面の課題なのですが、この本は将来的にはこんな風になりたい、という「理想の将来像」を持つことも手助けしてくれました。具体的には……

・ 気分や季節、お料理に合わせてSAKEを選ぶことができる
・ 気分や季節、お料理に合わせて「適温」でSAKEをいただくことができる
・ SAKEのタイプにあわせて酒器を選ぶことができる
・ 開封後のSAKEの熟成を楽しむことができる
・ 季節の行事や日々の出来事などをSAKEとともに味わう

 特に最後については、雪見酒や月見酒など楽しめるようになったら粋でオツですし、何かのお祝い事など特別な席、あるいは、何か落ち込むような出来事があったときにも、そのシーンにSAKEがあって、あの時◯◯を飲んだなぁと振り返ることができたら、人生がより豊かになるような気がします。

 最終的には「好みのSAKEは◯◯ですが、お料理や気分に合わせて、楽しむようにしています」というセリフを言えるようになることが目標です。ここに達するまでには、いろいろな種類のSAKEを飲んで、いろいろな温度帯も試してみて、料理との組み合わせもいろいろと試してみなければならないわけですが、そこにたどり着くまでのプロセスを楽しみたい! と思わせてくれる一冊でもありました。

 この本は私にSAKEを正しく楽しむための知識を与えてくれ、好みのSAKE、ときめくSAKEを探すスタートラインに立たせてくれました。あなたもこの本をお供に、心ときめくSAKEを探してみませんか?